2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

自然はどこに?/サンタクロースの落し物 『灰色の輝ける贈り物』『冬の犬』

自然が遠くなった。とぼやく人がときどきいるけれど、その“自然”ってなんだろう。 2・3ヶ月前の早朝、といっても冬だったのでまだ薄暗い明け方、犬の散歩に出かけたときのこと。近くの線路の下にある小さなトンネルをくぐるとき、突然、犬が何かに喰らいつ…

天秤と風船 (’02年末の彼の地 『イラクの小さな橋を渡って』)

「大量破壊兵器の保有」を口実にイラク侵攻が行われたのは、2003年。あの侵攻であっという間にフセイン政権は崩壊したがその後、現在あの国がどういう状況になっているのか知っている日本人はどれくらいいるだろう。というかイラクがどこにあるのか、わ…

『第四間氷期』 再読―断絶した未来

雰囲気や成り行きで、ある男女がセックスする。小説を読んでいるとそういうことはよくあって、ゴム持ってたの?とか、病気こわくないの?とか思ったりもするが、ともかくその結果、受精したとする。そのとき問題に成りうるのが「子どもを生むか生まないか」…

言語と思考の関係―南洋の祖先たちの海洋渡航は実は計画的だったのでは・・・?

図書館をぷらぷらしているとき、『日経サイエンス』(2011年5月号)という雑誌をなんとはなしに手に取りパラパラ捲っていたところ、「言語で変わる思考」と題されたおもしろい記事を見つけた。 「言語の違いと人々の思考の違いには深い関係がある」 なんとな…

主役に生物、舞台は地球 『種の起源』

「科学の世紀」と呼ばれる20世紀をそっくり飛び越え、さらに50年遡った今から150年前、ダーウィンが『種の起源』を出版した。科学の様相は刻一刻と変わってゆく。ほんの20〜30年前の著作でも今ではまったく通用しなくなっていることも多々ある。では、科学の…

「焼跡の灰の中から強く高く飛び立った」―遠く飛び立った、今/浜田省吾『僕と彼女と週末に』

「復興」「再建」といった言葉に、一抹の不信や懸念、あるいは不安を拭えない。 震災からおよそ1ヶ月。被災地はともかくその他の地域は、いろいろ悩ましいこともあれど、暮らしのリズム自体は落ち着いてきていると思う。テレビや雑誌、ネット上で、「がんば…

メタモンに学ぶ!

メタモンとは、いわずと知れた『ポケットモンスター』(通称ポケモン)に出現する「へんしんポケモン」というモンスターである。 その身体はスライム状で、ふつう紫色(あるいはピンク色や青色)である。技は「へんしん」のみとシンプルだが、これを使うこと…

被災地や避難所の人たちに手渡したい本

「この人の手にかけられたために恐くてなにも書けなくなる、なんて人もいるんじゃないか」 これは、はじめて斎藤美奈子の著作(『読者は踊る』)を読んだときに思ったこと。彼女は辛口文芸評論家として有名だが、遠慮や媚びがないから「辛口」のように思える…