2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

今週のお題「心に残る映画」― 『善き人のためのソナタ』

『善き人のためのソナタ』を観たとき、心の内に起こった、静かで、穏やかな感動に奮えて、しばらく呆然としたのを今でも憶えている。観たのは大学に入学したばかりの頃だからかれこれ4年ちかく経っているけれど、あのときの感動や余韻は今も心に残っている…

ただ生きたいと思う、その気持ち 『コーカサスの金色の雲』

重い内容だけど重苦しくない、生きいきとした小説だ。一度読んだらクジミン兄弟やアルフズールを忘れられない。 おれはまだ、食べものを求めてさまよい歩く、といったようなひもじい思いをしたことはない。生まれてからこのかた、あるいは物心ついた頃からず…

「東京生まれ、東京育ち」であることのデメリット

多くの人にとって、東京で生まれ、東京で育つということは、一見良いことのように、ないし有利に思えるかもしれない。しかし、おれは必ずしもそうではないと思う。むしろ「東京生まれ、東京育ち」は、その人にとってかなりのデメリットをもたらしているので…

トニオのもう一つの答え 『トニオ・クレーゲル』

文学に限らず諸芸術・各種エンタメ、もしくは仕事や勉強など、必ずしも分量や時間で量ることのできるものではない。たとえば小説なら、長いわりになにも残らないこともあれば、短いけども一度触れるとどこまでも憑いてくるようなものもある。 ある種の人にと…

鳥の糞と、パラドックス

春の陽光暖かな昼下がり、おれはコンビニへ向かって歩いていた。暇つぶしである。 ふいに、目の前に白い物体が降ってきた。ヒヤッとしたのと同時に落ちたところへ目を移すとそれは、車のボンネットやルーフトップあるいは境内の石畳なんかでよく見かける、し…