雑記

翻訳者に惚れ込まれるほど幸福な翻訳書はない

ジュノ・ディアスの『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』を読んだ。( ※ なお、このエントリにはいくつか注が付されているが、注にした意味はとくにない。この小説を読んで無駄にやってみたくなっただけ。)オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト…

「知ってる?エイプリルフールって、本当は4月1日じゃないんだよ」

「え!ウソ!?」 「ウソだよ」 ―お試しあれ。

「考えすぎ」に見える人に向かって、「考えすぎだよ」なんて言うべきではない

先日、2年ぶりくらいに会った友人Aと久しぶりで会ったとき、深夜のファミレスで言われた—「考えすぎだよ〜」と。けっこう久しぶりに言われたような気がする。 この場合の「考えすぎ」というのはつまり、「夫は浮気しているのではないか」とか「わたしはあ…

「微分型」と「積分型」と/おさらいの妙味 『おとなの楽習』(理科)

最近、自分のなかにある(ないし自分を乗っけていたらしい)“流れ”とでも呼ぶべきものが何か変化してきたような、というより、べつの流れが発生、勢いを増してきたような気がする・・・最近と言っても実は、河出の世界文学全集を読み終わったあたりに(つまりお…

ゆとり世代宣言

おれはいわゆる「ゆとり世代」である。 「あ、ゆとり世代か」「ゆとり世代だから〜なんじゃない」などと年上の方々が口にするのを幾度か耳にしてきた。逆に「最近の若者は意外としっかりしてる」といった好意的な言葉を聞いたこともあったけれど、そこには「…

『トロピカル・マラディ』または『山月記』

『トロピカル・マラディ』という映画がスゴかった。濃密でいて静謐。アピチャッポン・ウィーラセタクンというタイ人映画監督の作品である。いままで観てきた映画のなかでも五指に入る。もしかしたら1番かもしれない。 森林警備兵のケンと無職の田舎人トン―…

午前十時のノスタルジア

映画って結構シビアな―というか制約の大きい―表現形式だなぁ。などと、ときどき思う。 「スクリーンで観る」ことを前提にして製作されているにかかわらず、一般人が実際にスクリーンで観れる期間はとても短い。ほとんどの作品が1年も経てばスクリーンでは観…

稲刈りに行ってきた

司馬遼太郎は人の相貌を見ることでその人がどこの出身か(どの土地の血筋を引いているのか)当てることが得意だったという。『街道をゆく』シリーズの第1巻「甲州街道・長州路ほか」で司馬氏が書いていた長州人(山口県人)の顔によく見られる特徴というの…

鬱な気分だと思ったらやってみるとよいこと

高2の夏休み明けくらいから日記を書いているのだけど、大学に入学する頃まで、気持ちが沈んだり億劫だったりするようなときの状態を、常におしなべて「ウツ」の一言で済ましていた。たとえば「今日は〇〇があってウツになった。」とか「明日は早起きしなく…

『レスラー』再観賞/批評という援け

割引きクーポンが配信されるのを見計らって借りに行こうかと思っていたけれど、待ちきれなくて借りてきてしまった。ダーレン・アロノフスキー(『ブラック・スワン』の監督)の『レスラー』。 去年の秋のこと、なぜかやたらとDVDを借りてきては立て続けに映…

虫、虫、虫 /『ユリイカ』(2009年9月臨時増刊号)

数日前に図書館へ行ったとき、本当はまったく別のものを探していたのだけど、ふと、とある『ユリイカ』が目に留まった。それは2009年9月臨時増刊号で「昆虫主義」と銘打たれた特集が組まれたものだった。『ユリイカ』と言えば「詩と批評」の雑誌であり…

旅先が外国の場合もってゆくとよいもの

おもむろに、3・4年前にインドとか南米とかへ一人旅をしてみたときの話。 それぞれ3週間〜1ヶ月くらい滞在していたところ、おれの場合、だいたい1週間過ぎて2週目の半ばくらいにモチベーションみたいなものが急激に衰える傾向にあった。 体調が悪いと…

おっきな割れないシャボン玉 『生物から見た世界』/「Simple is best」の意味

「人それぞれに“見えている”世界は違う」と耳にすることがあるけど、人間が見ている「世界」と、その他の動物が見ている「世界」も異なる。このパンフレット的な本は動物たちにこの世界はどう見えているか、というより、どのように見ているかという話。 その…

ビニール傘考

序 梅雨はすぐそこ。そろそろあじさいも咲きごろ、花言葉は「移ろい」。 夜明けの空はあじさいの色をしていることがある。あじさいは漢字で紫陽花。「ああ、紫の陽ね」…と今思ったおれは紫色が好きなのだが、どっこい、この色、「欲求不満」を表すそうな。 …

エヴァ、観た、やっと

いやーついに、やっと、『新世紀エヴァンゲリオン』(TVシリーズ+「Air/まごころを、君に」)を観た。 ちなみにこのエントリーは、エヴァの感想ではなく、エヴァにまつわる個人的な捉え方や体験を書きます。 最近は「グランドセオリー」とか「ビッグ…

自然はどこに?/サンタクロースの落し物 『灰色の輝ける贈り物』『冬の犬』

自然が遠くなった。とぼやく人がときどきいるけれど、その“自然”ってなんだろう。 2・3ヶ月前の早朝、といっても冬だったのでまだ薄暗い明け方、犬の散歩に出かけたときのこと。近くの線路の下にある小さなトンネルをくぐるとき、突然、犬が何かに喰らいつ…

天秤と風船 (’02年末の彼の地 『イラクの小さな橋を渡って』)

「大量破壊兵器の保有」を口実にイラク侵攻が行われたのは、2003年。あの侵攻であっという間にフセイン政権は崩壊したがその後、現在あの国がどういう状況になっているのか知っている日本人はどれくらいいるだろう。というかイラクがどこにあるのか、わ…

言語と思考の関係―南洋の祖先たちの海洋渡航は実は計画的だったのでは・・・?

図書館をぷらぷらしているとき、『日経サイエンス』(2011年5月号)という雑誌をなんとはなしに手に取りパラパラ捲っていたところ、「言語で変わる思考」と題されたおもしろい記事を見つけた。 「言語の違いと人々の思考の違いには深い関係がある」 なんとな…

メタモンに学ぶ!

メタモンとは、いわずと知れた『ポケットモンスター』(通称ポケモン)に出現する「へんしんポケモン」というモンスターである。 その身体はスライム状で、ふつう紫色(あるいはピンク色や青色)である。技は「へんしん」のみとシンプルだが、これを使うこと…

A Mysterious Number

3月3日、春の節句。 ヤカンの注ぎ口から白い蒸気が勢いよく噴出した。湯が沸いた。ぺろりと蓋を開け、お湯を注ぐ。うん、カップヌードルはここからが長いね。3分。なにゆえ3分?わかんない。 手持ち無沙汰なので、「1、2、3、4、5、……」としばらく…

「東京生まれ、東京育ち」であることのデメリット

多くの人にとって、東京で生まれ、東京で育つということは、一見良いことのように、ないし有利に思えるかもしれない。しかし、おれは必ずしもそうではないと思う。むしろ「東京生まれ、東京育ち」は、その人にとってかなりのデメリットをもたらしているので…

鳥の糞と、パラドックス

春の陽光暖かな昼下がり、おれはコンビニへ向かって歩いていた。暇つぶしである。 ふいに、目の前に白い物体が降ってきた。ヒヤッとしたのと同時に落ちたところへ目を移すとそれは、車のボンネットやルーフトップあるいは境内の石畳なんかでよく見かける、し…